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ILO(国際労働機関)とディーセント・ワーク(1)

iforce の理念は、国境を越えた雇用創出です。そして、それは、ILOの掲げるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を目指したものです。今回は、ILOの歴史と活動を概観します。

1.ILOの位置づけ

ILO(International Labor Organization、国際労働機関)は、世界の労働問題に取り組み、労働者の労働条件と生活水準の向上を目指す国際機関で、国連の専門機関の一つです。皆様の耳目に触れる機会の多いWHO(世界保健機関)やユネスコ(UNESCO、国連教育科学文化機関)も国連専門機関です。ILOの加盟国数は187となっており、世界のほとんどの国が加盟しています。本部はスイス国のジュネーブにあります。

2.ILOの歴史

ILOは、国連専門機関の中で最も長い歴史を有し、その設立は1919年に遡ります。
18世紀後半から進展した産業革命は、労働者の生活にも大きく影響しました。産業革命に伴う貿易競争の激化は、各国における労働力のダンピング競争ともいえる状況を生み出し、労働条件の悪化につながっていきました。すなわち、多くの労働者が、長時間労働、低賃金、低劣な労働環境等の悪条件を強いられ、搾取と貧困にあえぐこととなりました。
そのような事態に直面し、政府、労働組合、社会活動家などが、その解決策の模索を続け、次第に、労働条件の法規制を国際的に行うべきとして、労働基準に関する国際立法を求める機運が高まっていきました。
そして、第一次世界大戦を経て、1919年、 ベルサイユ条約によって、国際連盟とともに、ILOは「国際労働基準設定のための常設機関」として誕生しました。

3.ILOの活動

ILOは、労使関係、労働基準、労働安全衛生、雇用対策、ジェンダー平等なども含め広範な労働政策の分野で国際労働基準を設定してきました。特に重要な国際労働基準であるILO条約が189本制定されています。各国の労働・社会保障関係法令は、ILOの国際労働基準を根拠とし、あるいは、その内容を取り入れています。我が国でも、労働関係法令の多くがILO条約の内容を取り入れています。
また、ILOは、労働監督技術の向上、労働安全衛生の技術の向上、安定した労使関係構築のための教育などの技術協力も行っています。さらに、近年は労働分野における国際的な政策助言や提言も行っており、G20やG7においてもILOの政策提言が重要視されるようになってきています。


上村俊一(非常勤理事)

1981年、旧労働省に入省。海外労働情報室長、中央労働災害防止協会国際センター所長、ILO駐日事務所次長等の国際関係業務に従事。ILO総会に5回出席。2018年、社会保険労務士事務所S&U労働コンサルティング代表。

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