1 .技能実習生の労災(労働災害)被災者数
本年5月27日の厚生労働省発表によると、2019年の外国人労働者の労災被災者数(休業4日以上の労災死傷者数)は3,928人でした。そのうち、技能実習生は1,393人で、全体の35.5%を占めています。すなわち、外国人労働者の労災被災者の3人に1人は技能実習生ということになります。
技能実習生に絞って労災被災者数の動向をみると、2015年498人、2016年496人、2017年639人、2018年784人、2019年1,393人と急増しており、2019年は2015年の2.8倍となりました。同じ期間において、技能実習生の総数は、2015年の168,296人から2019年には383,978人と、2.3倍になっています。ですから、技能実習生の労災被災者数は、技能実習生総数の伸びを上回り、憂慮すべき事態になっています。
2 .労働災害防止のために必要な事項
技能実習生の労災は、技能習得の夢を描いて来日した本人はもちろんのこと、遠く離れた母国で無事の帰国を待つ家族にとっても、悲しく、不幸な出来事です。
労働安全衛生法は、労災防止のため、事業主に多くの義務を課しています。実習実施機関は、事業主として、労働安全衛生法を遵守すべきは当然です。しかしながら、外国人労働者については、日本語や我が国の労働慣行に習熟していない等の事情があるため、労災防止のため、一層の配慮が求められます。
このため、厚生労働大臣の外国人労働者雇用管理指針では、外国人労働者の安全衛生の確保のために次の事項が規定されています。これに留意した雇用管理が重要です。
①安全衛生教育の実施(内容が分かるよう配慮、機械設備・安全装置・保護具の確実な理解)
②労働災害防止のための日本語教育等の実施(指示の理解に必要な日本語や合図の習得)
③労働災害防止に関する標識掲示等(図解を用いる等内容が分かるよう配慮)
④健康診断の実施
⑤健康指導及び健康相談の実施
⑥労働安全衛生法等関係法令の周知(分かり易い説明書を用いる等の配慮)
上村俊一(幣団体 非常勤理事)
1981年、旧労働省に入省。海外労働情報室長、中央労働災害防止協会国際センター所長、ILO駐日事務所次長等の国際関係業務に従事。ILO総会に5回出席。2018年、社会保険労務士事務所S&U労働コンサルティング代表。