技能実習生の来日目的は日本で3年間、ないし5年間実習を行い、技術を身につけて母国の発展に貢献すること、です。そのため、当たり前ですが、大原則は3年間ないし、5年間の実習を満了して帰国すること、となります。
しかし、多くの希望や高い志を持って来日したものの、実習生全員が3年間の実習を満了して帰国するわけではありません。先日トピックとしてあげた実習生の失踪(映画「海辺の彼女たち」~実習生の失踪と現実~ | 公益社団法人国際人材革新機構 (iforce.or.jp))もそうですが、途中帰国する実習生も多くはありませんが一定数います。途中帰国の理由としては、怪我・病気など予期せぬ事態、本人ではなく配偶者・子供・家族などの事情、モチベーションの低下やホームシックなど、100人の実習生がいれば100通りの理由があるのが事実です。
途中帰国の中で、割合は少ないものの、途中帰国の理由となるのが女性の実習生の「妊娠」です。技能能実習生の年齢は20歳から30歳が圧倒的に多く、つまり、結婚そして妊娠適齢期でもあります。実習生の中には、すでに結婚して子供がおり、国に家族を残して日本に来ている実習生、日本にすでに配偶者や彼氏がいる実習生、日本に来てから彼氏ができる実習生など、年頃の女性ならではのプライベートな事情があります。そのため、中には実習中に妊娠する実習生もいますし、実習が始まってみたら妊娠が発覚した(つまり入国前に母国で妊娠していた)ということもあります。出国前に健康診断、女性は妊娠検査も行いますが、タイミングによっては陽性になる前に検査をして入国した場合がこれに該当します。
実習生の妊娠に、実習実施者はどう対応すればいいのでしょうか?
これに関しては明確な答えがでています。(出典:外国人技能実習機構 PowerPoint プレゼンテーション (otit.go.jp))
技能実習生も日本国内で就労している限り、原則として日本の労働関係法令が適用されます。そのため、妊娠・出産をした場合でも、法律上では解雇することは出来ず、技能実習生本人の意思に反して帰国させることも出来ません。 そのため、技能実習生本人に出産という意思がある場合、技能実習を強制終了させるのではなく、技能実習を一時中断させるという対応が求められます。
つまり、実習生には3つの選択肢があります:
(1)技能実習を終了し、母国で出産する
(2)技能実習を中断し、母国で出産し、技能実習を再開する
(3)日本での出産・妊娠を希望し、技能実習を一時中断する
出産を希望する場合、多くの実習生が(1)を選ぶことになります。なぜならそれが最も現実的だからです。これまでアイフォースで妊娠が発覚した実習生はみな(1)を選択しました。
(2)、(3)を選んだケース*は今のところありませんが、その場合、実習実施者もアイフォースも法令に従ったサポートが必要になります。(*配偶者が日本人である場合を除く)
ただ、(3)実習生が日本に残って出産する、そして出産後実習を続けることは果たして可能でしょうか?
それはなかなか難しいのではないかと思います。
私自身、海外で勤務しているときに妊娠、そのまま海外で出産をしました。契約社員だったため、育休制度は使えず、産後3か月で職場に復帰しました。その際は日本から両親に子育てを手伝いに来てもらっていました。私が住んでいた国では10カ月になるまで保育所に預けることはできなかったため、他に家族や親せきはおらず、現地でベビーシッターを雇うほどの給与もなかったので家族を頼るしかない状況でした。そのため、実習生が身寄りもいない日本で出産し、乳飲み子を育てながら実習を続けることは相当難しいことはよくわかります。
アイフォースでは、妊娠してから問題解決をするのではなく、予防をすることで問題を発生しないようにすること、また実習生の妊娠と3年間しっかりと実習をし、本国に帰国すること、という原則を考えると、実習中の妊娠はできるだけ避けてほしい、という思いを込めて、実習生向けの性教育を行うことにしました。
7月は監査月間となりますので、訪問時に実習生への性教育の実施をしていく予定です。